2008年01月26日
「ルビーの影武者」レッドスピネルのペンダント
ミャンマー産レッドスピネルでペンダントトップを作りました。
天地4mm×3mm程の小さいルースでしたが、アンティーク調のミルグレインを使った透かしのデザインに仕立てました。
小さくともそのコクのある赤ワインのような濃いレッドカラー、煌くモザイクパターンはピジョンブラッドのルビーにもひけを取らない美しさです。
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細部をご覧下さい。
スピネルの語源は、ラテン語でトゲを意味する「Spina」です。和名を尖晶石といいます。
その名の通り薔薇のトゲのような八面体の結晶で産出します。
宝石言葉は 「夫婦愛 豊穣」です。
モース硬度が8と高い為、母石が風化して結晶のみが漂砂鉱床に流されても美しい結晶形が保たれている事が多く、
中でもミャンマーのモゴック地方からは完璧な八面体結晶が発見されます。
美しい結晶はそのまま、あるいは結晶の表面だけを磨いた物は「エンジェル・カット」と呼ばれてジュエリーに使用される事があります。
蛍光の強い ミャンマー産スピネル エンジェル・カット ホットピンク
長い歴史に亘ってルビー(コランダム)と混同されてきたこの石ですが、同じ場所に産出するだけでなく、外観が酷似しているのです。両者の科学的・物理的特性は非常に良く似ていますが、スピネルは等軸晶系、コランダムは六方晶系であることが大きな違いです。
スピネル本来の色は無色透明ですが自然界には稀で、実際には鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)等の着色成分となる遷移元素が不純物として含有され様様な色相を示します。
スピネルが明確に認識されるようになったのは1783年の事です。その後も産出量が少なく、市場に出る絶対量が不足していた事から知名度は上がりませんでした。
たとえばミャンマーではコランダムの5分の1、パキスタンでは10分の1に過ぎません。産出量の少なさに加えて知名度が低い事もあり一般の宝飾小売店ではあまり見かけることのない宝石です。
しかし、コランダムの加熱処理が複雑化するのにつれて、未処理のスピネルの価値が見直され始め、その美しさ、硬度の高さ、価格のお手頃感から最近は大変注目を集めています。
ルビーのような純赤のレッドスピネルは特に人気が有りますが、ミャンマーやタンザニアの鉱山で産出するホットピンクやチェリーピンクと呼ばれる、鉄分の少ない、蛍光の大変強いスピネル独特の色相も最近人気が上がってきました。
当然価格も急上昇しています。第二のパライバトルマリンのような人気を博すかも知れませんね。
蛍光の強い ミャンマー産スピネル ホットピンク
「ルビーの影武者」
世界中のルビーの王冠の多くは実はレッドスピネルです。英国王室の大礼用王冠「インペリアル・ステート・クラウン」の中央前部にある170ctの「黒太子のルビー」、ロシア帝国エカテリーナ1世の王冠の宝石、ムガール帝国の皇帝の名が刻まれている352ctの「チムール・ルビー」etc・・・。
誰もが目にする王権の象徴である王冠にあって、その豪華な美しさを称えられながら、ルビーの影武者として何世紀にも亘って本名を知られずにいたのが「スピネル」なのです。
Posted by まこちゃ at 23:57│Comments(0)
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